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〜医者はどこまで患者と向き合っているか?〜主治医はあなた【随時更新】

現代の医療のあり方に一石を投じ、これからの医療の可能性を模索する。
心身統合医療に力を注ぐ、医師・樋田和彦のメッセージ。

主治医はあなた

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ストレスの原因を見つけ出し
解放へと導くキネシオロジー。

■おでこに手を当て、ストレスから解放するESR

筋力とストレスの関係を調べていくうち、筋肉には普遍性があって、ストレスに対して全身のどの筋肉も同時に反応していることや、筋肉は「イエス」か「ノー」にも答えてくれるという、じつに不思議な機能を持っていることを知りました。

そのきっかけとなったのは、20年以上前に南山大学(名古屋)で隔月で開催された、ホリスティック医学協会中部支部のセミナーでした(当時、私は同中部支部の代表を務めていました)。このセミナーに、キネシオロジーを海外から取り入れ国内で広めた石丸賢一氏をお招きしたのです。石丸氏は京都大学の哲学科出身で、キネシオロジーの分野を中心に国際的な活動を続けていました。

セミナーではキネシオロジーの実技が行われ、そのモデルとして私が選ばれ、聴衆の前に出て石丸氏の左隣に立ちました。

彼は私に「右足の太腿を思いっきり上げて下さい」と命じました。体が不安定になり、私は彼の肩に右腕をかけました。次に、「あなたの上げた太腿を私が押し下げから、できるだけ耐えてください」と私の右膝をぐいと押し下げます。膝は10センチほどですが下がりました。

続いて彼は「では、不幸なことでも不快なことでも良いですからネガティブな事柄を想念してください」と指示しました。私は言われたように、不快なことを思い浮かべました。彼が先ほどと同じように私の膝を押し下げると、もろくも私の膝はくずれ落ち、床に足先が着いてしまいました。

このことから、不快な言葉や状況を想念すると、足の筋力は通常より下がることが分かります(逆にポジティブな想念では筋力は下がりません)。ただし、ここまでは手の指を使うOリングでも経験済みのことです。

続いて彼は「次に左の手のひらをおでこに当て、同じことを試してみましょう」と言いました。私は左手を自分のおでこに当て、不快なことを想念しました。彼が私の右膝を押し下げると、今度は不思議です。右膝はビクともしません。つまり、筋力は下がらないのです。

この体験によって「おでこに手を当てると筋力が下がることを防ぐ」ことを学習しました。そう言えば、人は困ったときや思案するとき、ごく自然におでこに手を当てます。これを、キネシオロジーではEmotional Stress Release(ESR)と言います。私は患者さんをストレスから解放するために、このESRを診療で活用しするようになりました。その事例をひとつ、紹介しましょう。

ケーススタディ

父親にストレスを抱えた30代の女性

初診時にいきなり「先生、人はなぜ死んではいけないのですか」と尋ねた女性がいました。突然のことで、私は少々驚きました。「もう2度も自殺をはかっているので死ぬことは怖くありません」と畳み掛けられました。詳しく話しを聞いていくと「私は父親から嫌われています。お前なんか、オレの子じゃないと父は言うんです」。

彼女は看護師の資格を持っていますが、そのときは働く気力もなく、仕事はしていませんでした。

キネシオロジーの検査で、彼女が父親に対して強いストレスを持っていると同時に、快感のサインであるエンドルフィンとオキシトシンにも反応があることが分かりました。彼女の本当の心の内は、父親に対して「愛しい」という感情を持っているのです。そこで私はEmotional Stress Release(ESR)という技術を使うことにしました。子どもの頃からの父親との葛藤を回想してもらい、私が彼女のおでこに手を当てるのです。回想する時期は、その都度、変えていきます。これを通院してもらいながら何回か続けました。徐々に父親に対するストレスから解放され、彼女は元気を取り戻していきました。そして一人住まいを始め、看護師の仕事も再開しました。

じつはこのエピソードには続きがあります。

何年か過ぎた頃、再び彼女は興奮した様子で来院しました。やはり父親のことでした。久しぶりに実家に変えると、祖母が弱ってきたので、父親が「お前ら、面倒をしっかり見ろ」と命令したそうです。彼女は訳も分からず、父親の手にかみついたというのです。その日はひととおり話を聞き、帰ってもらいました。

翌日、待合室で興奮して大声でわめいている人がいます。なんと彼女の父親です。診察すると「うちの娘はとんでもないヤツだ。手に噛みつきやがった」と乱暴な言葉です。私は彼女のカルテを取り出し、キネシオロジーで明らかとなった本当の心の内をお伝えしました。「娘さんはお父さんに“愛しい”という心を持っているんですよ」と。父親は急に神妙になり、じっと黙っていました。そして待合室での大声とは別人のように、小さな声で「分かりました。ありがとう」と医院を後にされました。父親もまた、ストレスから解放されたのかもしれません。

<ESR>
私たちは困った時、思案しているとき、構想を練るときなど、本能的におでこに手を当てます。キネシオロジーの先達は、この動作をストレスの解放に活用しています。

次回でも、キネシオロジーを使ったケーススタディを紹介します。

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