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〜医者はどこまで患者と向き合っているか?〜主治医はあなた【随時更新】

現代の医療のあり方に一石を投じ、これからの医療の可能性を模索する。
心身統合医療に力を注ぐ、医師・樋田和彦のメッセージ。

主治医はあなた

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病名というものは、
整理するうえで都合のいい
「肩書き」に過ぎないと思うのです。

■情報中毒は、医学の世界でも起こっている。

「情報化社会」という言葉が使われるようになって久しいですが、この言葉の意味って分かりますか。
調べてみますと、「情報が諸資源と同等の価値を持ち、情報を中心として機能する社会のこと」と書かれています。何やら難しそうですが、簡単に言ってしまえば、情報が優先される社会ということ。そこには喜怒哀楽や五感といった、生きている私たちの感情や感覚は介在していません。
一口に情報といっても、私は大きく2種類あると思っています。実体験に基づいて、自分のなかにインプットされていく「生きた情報」と、ネットや書籍など世の中に出回っている「情報化された情報(2次情報)」です。情報化社会においては、2次情報があふれており、次々とコピー情報があふれ、2次、3次、4次と、とめどなく情報が広がり続けています。

最近では、インターネットやスマートフォンといったIT関連の発達によって、「高度情報化社会」という言葉も飛び交うようになりましたが、その一方、情報過多による副作用を危惧する声も高まりつつあります。副作用とは何かというと、「情報中毒」です。主に次のような症状が挙げられます。

【情報中毒の症状】
  • 情報に触れていないと不安になる
  • とりとめもなく情報を受け入れてしまう
  • 集中力が低下する
  • 1日に何時間もネットを見るなど時間を浪費する

身の回りで、思い当たる節はありませんか。こうした症状以上に、私が最も恐ろしいと思っているのは、情報に感化されて(毒されて)しまい、自分自身で物事を判断する機能が麻痺してしまうことです。その情報が本当に正しいのか、根拠はいったい何なのか、はたして例外はないのか。自分なりに検証したり考えようともせず、ネットや本に書かれていることをただ鵜呑みにして、信じきってしまう。これって、とても怖いことだと思いませんか。

じつは医学においても、見方によっては、同じような一面があると思っています。患者さんの症状を病名に当てはめるだけ、というような、「情報化された情報」によって成り立っている部分があるとはいえないでしょうか。多くの医者たちは、患者さんの症状に対して病名が決まれば、ほっと安堵する。そして、その病気の治療薬としてリストアップされたものを処方し、診療は終了します。こうした一連の流れから少しでも外れると、多くの医者は不安を覚え、周囲は「異端」として白い目を向けます。

でも、ちょっと待ってください。決まったレールをたどるだけの診療が、本当に医者の仕事といえるのか。それで「患者さんを診た」といえるのでしょうか。病名というものは、医療側が患者さんを整理するうえで都合のいい「肩書き」に過ぎないものであって、本来の診療とは、今、目の前にいる患者さん自身をしっかりと診てあげることだと思うのです。ところが、医学の情報化などによって、いつの頃からか医者は、患者さんを診ることより、むしろ病名ありきのデジタル的な診療になってしまってはいないでしょうか。

■本当に患者さんの病を治したいなら、注目すべきは病名ではない

どんな病気であっても、医者が本当に患者さんの病を治したいと願うなら、注目すべきは病名では決してないはずです。なぜなら、身体が人それぞれであるように、病気もまた、人それぞれなのです。同じ病名を診断されても、すぐ治る人もいれば、なかなか治らない人もいる。Aという薬が効く人もいれば、Bという薬が効く人もいるし、いずれもまったく効かない人もいる。
病気の経過や治り方が、患者さんによってそれぞれ異なるわけですから、病名や学問上の情報だけにとらわれることなく、まずは患者さん自身をきちんと診るべきだと私は考えます。

病気の多くは、なんらかのストレスによって自律神経の働きが低下し、交感神経と副交感神経のバランスがいずれかに片寄った状態です。そのアンバランスな状態が長く続くと、自然治癒力が働かず、身体にはさまざまな不調が現れます。この時点で、いくら検査をしても病因を特定できなければ、一般的には「自律神経失調症」と診断されるわけですが、その他の病気でも、自律神経には確実に「異常」が見られます。耳鼻科の疾病、リウマチ、ガン、どんな病気であっても、自律神経と決して無縁ではないのです。

つまり、シンプルに言ってしまえば、自律神経の状態を診断することができれば、ほとんどの病因はおのずと見つかります。病因が分かれば、自律神経のバランスを整える方法も見えてくるというわけです。そして、自律神経のバランスが整うということは、病気が治る、健康なその人らしさを取り戻すことにつながります。

ただし、現代の情報化された医学では、自律神経の状態を診断することは極めて難しいといえるでしょう。「自律神経失調症」という「肩書き」に当てはめるだけでは、何の解決にもならないからです。

最も大切なことは、本来の診療の在り方に戻ること。つまり、患者さんという人間の全体を診ることです。

次回は、私がどのような診療を行っているか、お話します。

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